この話は2021年にミャンマーで起こったクーデターを描くストーリー。第三話に続き私がミャンマーに来てからのこと、私が学んだこと。そしてミャンマーで始めた仕事は日本の社会問題に直結していたのだ。
人材育成と日本への派遣
前回お話ししたとおり、「貧しい国の人たちが日本に行き、稼いで少しでも豊かに。そして、日本の人材難で困っている企業の助けになるように」
この想いで設立したミャンマーの日本語学校。
学生も予想以上にたくさん集まり、日本語のクラスも大盛況でした。クラスを開けるスピードよりも入学希望者が多くて、常に待っている状態です。
しかし、日本に行って働きたいミャンマーの若者がたくさん集まっても日本の受け入れ先企業がなければ、派遣先がなくて日本に行くことがかなわないですね?
そうです。日本に働きにいくためには、その送り先の企業が必要になるのです。
私は日本語学校の運営をしながら日本とミャンマーを、何度となく行き来し、日本全国北海道から九州まで飛び回り受け入れ先の企業を探し回りました。ヤンゴン、成田間を何度往復したか分からないほど往復しました。
奴隷制度と呼ばれた技能実習生制度
私達が育成を手がけ日本に送り出すためには日本で働くための在留資格を入管から発行してもらわなければなりません。色々な在留資格がありますが、私達は一つの在留資格の取得を選択し集中しました。
それが「技能実習生」です。
この技能実習生という言葉を聞いたことがある方も多いかと思いますが、世間では非常に評判が悪いのです。
なぜなら、日本で技能実習生を受け入れた受入企業が、労基法を守らずに外国人達を雇用すると言うケースが後をたたず、奴隷のように外国人達を取り扱うので「奴隷制度」と比喩されていました。
・長時間の違法な残業
・セクハラ問題
・妊娠したら即帰国
・失踪しないようにパスポート取り上げ
世間でも劣悪な雇用状況などを考え、技能実習生制度の廃止を訴える声もありました。
数多くの外国人雇用に関する問題点
世間が技能実習生制度を廃止と叫ぶ声もありますがその前に私はこれらの問題点について以下のように考えていました。
受け入れ企業をしっかりと見極め派遣することも送り出す側の責任。もちろん受入企業の責任は当たり前。そして、万が一問題があればすぐに関係機関へ報告し、是正勧告してもらう。
もし技能実習生制度が廃止されたりすれば、また日本に行く道が狭まり、ミャンマーの若者たちの家族の暮らしは一向に向上していきません。
一方で、よい受入企業が多いことを忘れてはいけません。メディア報道では、法令違反をする企業のニュースばかりが取り上げられ、問題のない企業があるということを世間に知らせることがないからです。
また、日本人だけの企業でも法令違反はあります。一方的に外国人を雇用する企業をしだけを問題視するのではなく、日本人・外国人分け隔て無く、是正していくべきだと思うのです。
ただ、外国人を雇用している企業が問題視され、メディアにとりあげられると言うことは、それだけ外国人雇用に関するニュースが注目されているということでもあります。
制度にも大きな不備がある
元々この技能実習制度は国際貢献をうたって法整備されました。下記がうたわれている文言です。
技能実習制度の目的・趣旨は、我が国で培われた技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際協力の推進です。
要は日本の技術を途上国に対して「技術移転」することを目的としていると言うところです。
すでにこの時点で、実態と制度の乖離が生まれており、問題が発生するべくして発生していることがよくわかります。
ほとんどの日本に働きに行きたいと考える外国人は技術移転という建前のもと、お金を稼ぎたいという本音で日本を目指します。
実態は労働者不足の日本を
補っているのが技能実習生
技術移転をしたい!と日本の国が決めたマスターベーション制度に付き合う外国人がどの程度いるのか。皆無に近いともいわれています。
結局は外国人の出稼ぎニーズを逆手にとり、日本に来れば高賃金が稼げるという餌を垂らした上で、日本の建て前を遵守させようとしている。ということに過ぎないのです。
しかし、要件上、技能実習生ビザでしか日本を目指せない外国人も多く、日本の入管制度により技能実習生として日本に行くという選択を、余儀なくされています。
※最近は特定技能という新たなビザが新設されまたした。
私もこの問題にはいつも考えさせられています。しかし、向き合っていかなければいけない。
ビザの話を始めるときりがなあのでまた別の機会にでも。ミャンマーの話に戻します。
数え切れないほどのアテンドをこなす
数々の社会問題がありながらも私が運営する日本語学校は短い期間で大きく成長しました。そして、人材を採用したい日本の受入企業も数多くミャンマーに訪れ採用面接を行います。
それはうれしい悲鳴でした。
訪問する受入企業の社長や採用担当の方々は次から次ぎへとはるばるミャンマーまで飛行機でやってきます。片道7時間のフライト。
皆初めてのミャンマー訪問を楽しみにやってくるので、私もミャンマーを思う存分肌で感じてもらいたいとの一心。到着から帰国までひっきりなしに忙しくなります。
こんなに多くの日本人をフルアテンドした経験は私も人生初です。色々な人間関係も学び、いろんなタイプの人がいることも知り、これは他にはできない経験をしたと思っています。
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