この話は2021年にミャンマーで起こったクーデターを描くストーリー。クーデターからの激しい弾圧。国民達の軍との戦い。そして、現地でクーデターを直接体験したこと。
インターネットでの戦い
2021年、ミャンマーにはすでにインターネットが張り巡らされており、携帯電話は一人一台。それもみんなスマホ。そんな時代に起こったクーデター。
街頭に出てストライキを行う国民たちがいる中、ネット上で毎日起こる弾圧を実況し、国内もとより国際社会にミャンマーがさらされている現実を伝える。そんなネット上で戦い続けている人々もいたのです。彼らは「キーボードファイター」と呼ばれるネット住人。
今回の記事はそんな彼らに焦点を当て、話を進めていきます。
メディアとネットの情報統制
国軍はクーデターを起こした後すぐに取り組んだのがサイバーセキュリティ法の改正で、国家の安定を乱す情報発信者のIPアドレスの提供開示請求をネットプロバイダーにできるとしました。
言論の自由や個人情報保護なんかはもうこの国にはありません。
さらには特定のSNS(FacebookやTwitter など)へのアクセスを制限し、ネット上での国軍の弾圧行為の拡散を食い止めようとしました。
また、新聞、オンラインニュースなどのメディアにと規制をかけメディアライセンスの停止などによって、報道の制限を行い、国営メディアをミャンマーのプロパガンダにしようとしました。
国民は誰もが国営メディアを無視し、くだらないフェイクニュースだと見ようとはしていませんでしたが…
上記画像Breaking NewsのはずがBreakfast Newsになってて適当すぎると話題にもなっていました。
まさに軍と国民との情報戦争です。
国民たちのネットでの抵抗
しかし、国民たちもあの手この手で妨害してくる情報遮断を切り抜けていきます。
特定のサイトへのアクセス制限はVPN接続で回避したり、規制があまりはいらなかったFTTH(ファイバー接続)を導入したり。
モバイルインターネットが遮断されたときはSMSを駆使して画像を送ったりして日々起こる事件を何とかしてシェアしようと戦ったのです。
全国に存在するキーボードファイター達は情報源からの提供された動画や画像、テキスト情報をくまなく拾い上げ、すぐに情報をシェアします。
シェアされた情報はみんながリツイートするなどして、さらにシェアを広げていきます。そして、抵抗活動をする国民たちはバライティに富んだ映像や写真をたくさん撮り拡散していきます。毎日のように反軍&民主化キャンペーンがあるのです。
下記のような写真は全て民主化を求めるクリエイティブとして多くシェアされました。紹介しきれないほどの世界に訴えるクリエイティブです。
このようなキーボードファイターの毎日毎日の「バズらせる抵抗」により、国軍の残酷な弾圧や抵抗活動はみるみるうちに世界へとシェアされていったのです。
この見えない戦いに国軍もさぞかし頭を痛めたことでしょう。挙げ句の果てには、夜間はすべてのインターネットラインをカットオフするという強硬手段に出ました。
私の自宅には幸いFTTHのラインを引いていたのでインターネットはつながりましたが夜間は完全に繋がらない状態が数ヶ月続きました。
この間はもう、まさに寝るしかないという状態。キーボードファイター達のコミュニティでもカットオフの時間前になると、「明日また元気に会いましょう」「絶対に無理をしないでください」などと声を掛け合っていました。
道に描かれるデモクラシーアート
国民たちは民主主義を訴え、ミャンマーの道にデモクラシーアートを描いていきます。それを上空から撮影し、これらのメッセージもキーボードファイター達が拡散しました。
デモクラシーアートもご覧ください。
このようにいろんな手段を考え、国際社会にミャンマーの現状を伝えました。
しかし、軍の弾圧は続きます。
軍は夜間に家宅捜査をしたり、パチンコで家のガラスを割ったり国民たちは夜間も怯えながら眠る日々でした。家に来られたら誰かが容疑をかけられ連れて行かれます。
抵抗する国民を排除に動く軍
2021年3月以降は国民の抵抗活動やデモは各地で行われ、地区毎に軍は抵抗する国民たちを一掃しようと躍起になります。
街の至る所に構築されたバリケード。繰り広げられるデモ活動。街中で上がる火の手。破壊される財産。町中が戦場のようになってしまいました。