この話は2021年にミャンマーで起こったクーデターを描くストーリー。クーデターからの激しい弾圧。国民達の軍との戦い。そして、現地でクーデターを直接体験したこと。
大規模な国民の抵抗は収まるも…
2021年2月から4月頃まで軍に対して国民は抵抗を続け多くの死者、拘束者がでてしまいました。
私の家のすぐ100m先でも銃に倒れた青年がいます。抗議活動を行い、突入してきた軍に追われ、逃げているところを後ろから撃たれたのです。
家から銃声も聞こえました。住宅街の中でこのような残虐があちこちで行われたことを考えると心が痛み、勇敢に抗議を続けている若者たちに申し訳ない気持ちでいっぱいになるのです。
銃と実弾の前に抵抗する若者たちは次第に抑えこまれ、街中での抵抗活動も限りなく少なくなりました。少なくともヤンゴンは収まりましたが、地方では村の焼き討ち、襲撃などがいまでも続いています。国内難民も多数発生。
なぜ死の危険を省みず抵抗するのか
圧倒的な武力の差があることを分かっていながらも、なぜ若者達は抗議をするのか。
運が悪ければ死に至ります。そしてその確率は高く、普通なら銃を使われたら恐怖で抵抗をやめるでしょう。でもなぜ抵抗し続けたのか。
その答えは恐らくあまりにも非道で残酷な軍の行為と理不尽なクーデターのためです。
国民に突きつけられた残酷な光景
軍の非道な行いはすべてネットを通じて彼らは見ています。また、国民の自由を奪いました。言論統制、ネットの利用制限、メディアの排除。
さらには、国軍による家屋の破壊、家に侵入しては金品の略奪、そして放火。強制連行。家だけではなく車も破壊しました。
そして、多くの国民が実弾に倒れ、その死に様も写真や映像ですべての事実を目の当たりにしてきたのです。いたたまれない残酷な死に様です。
軍の支配は死よりも恐ろしい
私も数え切れないほどの実弾に倒れた写真、映像、拷問を受け、家族の元に遺体となって返された悲惨な写真などをみてきました。
抵抗する若者は言いました。
「死ぬのは怖くない。怖いのは残虐な国軍に支配された国で生きなければならないことだ。」
悪魔のような連中に支配され生きていくなら、死を持っても抵抗する。と言うことなのです。
それが彼らの実弾をも恐れない真の強さと勇気を生み出したのです。
経済も大混乱に陥る
軍のクーデターによりミャンマーの経済も大混乱に陥りました。
外国の投資は止まり、日本からの支援も一時停止や撤退表明され、海外からのミャンマーで行うビジネスは非常にリスクが高まり、投資は一気に引いていきました。
また、経済の悪化に伴い、為替も暴落しミャンマーの通貨はどんどん値を下げていきます。
生活用品などは外国からの輸入に頼っているために、為替安は物価の上昇を招き、エネルギー資源などの価格は倍増しました。
現在も大幅なインフレ状態になっています。
通貨の信用が落ちることにより、銀行の取り付け騒ぎも拡大し、ATMには行列ができ、現金をこぞって下ろす国民たちの姿にさらに金融不安は拡大していきます。
ついにはATMからの引き出しはできなくなり、銀行の窓口も閉まりました。そして、大手銀行もすべて、殻に閉じこもってしまったのです。
幸いなことにミャンマーは農業大国であり、食料は供給されていますが、地方の貧しい人たちや村を破壊され追われた人々は国内難民となり、食料などは支援に頼るしかなくなっているという人々も多く発生しました。
多くの製造業の工場はクーデターの混乱により操業停止、または解散したことにより一般労働者の工場作業員は仕事もなくなり、貧困にあえいでいます。
クーデターとコロナのダブルパンチ
2021年7月頃から、さらにコロナ感染拡大の大きな波がやってきます。クーデターでぼろぼろになった経済の中、今度は感染症による医療危機も訪れ、7月から8月にかけて多くの人が亡くなりました。
酸素不足や適切な治療ができず、助かる命も救えなかったのです。
病院にかかることができない貧しい人たちも多く、自宅治療をするため薬を求めてに薬屋にも行列ができました。
まさに泣きっ面に蜂です。
武力の前に国民は何ができるのか
圧倒的な武力差の前に国民はなすすべがないのでしょうか。クーデターによってミャンマーの国が好転し、経済もよくなり、人々が豊かになるのであれば、軍は国民の考え方を変えることができたかもしれませんが、すべてが悪くなるばかり。
国民達は全く納得出来るものではないでしょう。
国民の民意とは全くかけ離れた私的な利権獲得のためのクーデターであるといわれています。
しかし、軍への抗議抵抗は圧倒的武力差により命を落とす危険があります。いくら死ぬことが怖くないといっても、そのシチュエーションになれば、誰だって怖いはずです。
しかし、国民の軍政への反対する若者たちは、地方の民族軍へ入隊し、戦い方を学び、いつでも戦えるようにトレーニングをも厭わず、民主主義を取り戻すために準備をしました。
これから、戦いはまだまだ続きます。
民主主義を取り戻す決定的なきっかけが無いまま、時間は過ぎていきますが、着実に国民はその道を曲げずに進んでいることは間違いありません。
また、大きなストライキやデモがこれから起こるかもしれません。安心して暮らせる日々を国民も望んでいますが、軍の利己的なクーデターで始まった軍事政権を決して許容することはないでしょう。
次回はこのストーリーの最終話です。
[最終話]クーデターを現地で体験した私の感想のすべて。